ルドルフ・シュタイナーの哲学や思想をベースにした、「自分に出会う」「自分に還る」ためのクラスです。4つの気質、物語、粘土、魂の錬金術、人生学、色彩、観察といったテーマでお話をしています。といっても、何か知識を覚える授業ではなく、「それを注意深く観察したり意識することで、自分が何に出合えるのか、何に気づけるのか」という機会を提供する場です。人は何からでも学べるし、学びから得られる果実は人それぞれです。ぼくが何かできるとしたら、みなさんがいちばん意外に思う立場やアイディアの話をします。たたき台があれば、考えやすくなるかもしれませんから。命あるものはすべて、何かになろうとする途中、「Being」の存在です。「自分らしく在る」ことへの興味や問いがある方は、どうぞクラスにいらしてみてください。

シュタイナー教室

「魂の錬金術」で自由な自分に

「理想の自分になる」とか「なりたい自分になる」という言葉をよく聞きます。これは私のなかでは、「ほんとうの自分に還る」という表現がしっくりくるかな。人はもともと、いろんなものをたくさんもっています。ただ、その「自分らしさ」を忘れているだけ。

シュタイナーの自由に対する思想の中に、「魂の錬金術」につながるアイディアがあります。まず、自分にとってあってほしくないものーーたとえばすぐにカッとなる、悲観的になるなど、パッと反応して出てしまう頑なさや傾向をじっくり味わいます。「そんなふうにしてしまう自分」を分析、分解して、たくさん知ってたくさんわかってあげてください。そしてそれらを再構築して自分にとってのゴールドをつくりだし、最終的にそれを破壊します。ゴールドの奴隷にならない、ということを大事にしてほしいのです。「私」を構築してきたものの見方、傾向、パターンを手放して解放したとき、内的成長が訪れます。その一歩が人を自由にしていきます。自分への眼差しが豊かになり、自分がほんとうは、いろんなものをたくさんもっていることに気づいていきます。

シュタイナー教室

踏み出す一歩があなたの道をつくる

シュタイナー教育をひとことで表現すると「自由な教育ではなく、自由への教育」。自分自身からも自由になれる。そこがいちばん好きなところです。意識している枠、無意識のうちに入り込んでいる枠。そういった枠にとらわれなくていいことがわかると、「私らしく在る」ことが増えて、できることも増えるような気がします。

人が「苦しむ」という状況をつくり出すのは、八方塞がり感だと思っています。「もう無理。もう何もできない」と、自分の可能性を閉じてしまう。でもその状況に対して、「こうも見られるしこうも感じられるし、そしたらこうもできるかも」というとらえ方ができたら? 私のクラスでは、「できることはまだ、あると思うよ」と、ただ、道が在ることを伝えています。

シュタイナーは、足は自分のための意思を表し、手は誰かのための意思とつながっているとしています。なので、自分の足で歩み出したその意思ある一歩には、たとえそれがどんなに小さくとも、あなたに見つけてほしがっている「あなたのかけら」があるように感じます。

田中 伸欣
Tanaka Nobuyoshi

シュタイナー教室の先生。

30歳でアメリカ・カリフォルニアにあるシュタイナーカレッジに留学。デニス・クロチェックにめぐり逢い、「意識の授業」を受けるなかで、人生を味わうことの奥深さに気づかされる。同時に、デニスの深い愛と信頼に満ちた「器の大きさ」「在り方」に感激し、デニスのやっていたような授業を日本でやりたい、と尾道に帰る。アルバイトをしながら、いつ実現するともわからない授業プランを練ること2年。鳴かず飛ばずで、とうとうお金が底をついて就職を決めたその日の夜に、「人を集めるので教室を開いてください」という一本の電話が。「世界は味方してくれている、応援してくれていると感じました」。それが2009年のこと。以来、口コミで教室がどんどん広まっていき、「英語はできますか?」「うつ病の人をみてほしい」という依頼も。その流れで家庭教師や心理カウンセリングなども引き受けている。「ありがたいことです」。

ルドルフ・シュタイナーとは
20世紀のオーストリア(現在のクロアチア)生まれの哲学者であり、神秘思想家。「人間が自らの叡智で人間であることを見出す」という人智学を唱えた。シュタイナーが関わる分野は多岐にわたっているが、なかでも、子どもが「自らの意思によって行動できる」人間になるためのシュタイナー教育や、土壌だけでなく天体の動きをも見据えた循環型自然農法・バイオダイナミック農法が知られている。