用いる紙芝居や絵本はすべて、手づくり。『血のはなし』『ちゃんと食べて、出す』『老化の鍵は腎にある!』『ぼくのなかのロウソク 腎』などのテーマ別の絵本を元に、子どもが多いときは子どもに、女性が多いときは女性に興味をもってもらえるような語り口調や内容で、漢方医学のお話をしています。ゲリラライブなので、最初は人集めから。ハッピを着て拍子木を打ったり、血のめぐりをよくするかんたんな体操をいっしょにしたりと、気軽に気楽に足を止めてもらえる雰囲気づくりを心がけています。「漢方はよくわからない」という人やアンチ漢方の人も大歓迎。これを機に、「漢方への小さい興味に少しでも火がついてくれたら」というのが私の願いです。毎月第一日曜日に尾道で開かれるオーガニックマルシェ「おのみち家族の台所」にて開催。しぜん療法院おのみちの家や個人宅でも、不定期ですが紙芝居やお話会を開いています。

青空漢方教室

体と自然は写し鏡

漢方のおもしろいところは、ひと言でいうと、「自然現象と同じことが体の中で起こっている」という考え方です。たとえば、水の流れが滞っているところは、石をどけてあげれば流れがよくなる。水脈をととのえてあげることで、その土地が潤いますよね。体も「水(すい)」の流れがよくなれば体全体が潤います。むくみがなくなり、便の通り道の腸や呼吸器、関節、肌なども潤っていきます。また、風はどうでしょう。風がまったく吹かなければ大気はよどみます。体の中も同じです。頭が締め付けられるように痛いとき、東洋医学では体の風通し、気のめぐりが悪いととらえます。風通しをよくするような、たとえばシソ科の植物を使った漢方薬を処方しますが、結果的に、頭だけではなく全身の気の流れがよくなっていきます。

漢方は、むくみとか痛みといった個々の症状に対しての対処が、体全体のバランスをととのえ、循環させることにつながっていくのがすごく好きです。

青空漢方教室

自分を、自然を、もっと観察しよう

現象には、必ずわけがあります。「病気=悪者」と決めつけるのではなく、「不調はその人に何かを気づかせるためのサイン」。自然界で自然のバランスと循環を取り戻すために山火事が起こるように、熱が出るのも、体が自然体に戻ろうとして熱を上げているんです。無理やり水をかけて火を消して一件落着ではなく、もっと奥底に根本的な問題が潜んでいないかどうか、自分の体調や生活習慣を振り返るチャンスではないでしょうか。

漢方では「観察」がすごく大事。だから、何十年も観察を続けてきたドクターや薬剤師さんたちの話を聞ける勉強会は、私にとっては宝物です。会のあとで手紙を出すとみなさん丁寧に対応してくださり、おかげで経験に基づいた漢方医学の「生の授業」をたくさん受けることができました。一般の人にわかりやすく伝えたいという思いで探り探り手がけてきた漢方絵本も、スペシャリストの先生方から意見をもらえて、ほんとにありがたかったです。

同時に、漢方を知って観察すればするほど、気づかされることがあります。自然環境の問題です。たとえば、川が氾濫しないようコンクリートで覆ってしまうのはどうなんだろう? 体と自然はつながっていて同じなんだよというのを、子どもたちにも知ってもらいたいですね。

岡崎 裕美枝
Okazaki Yumie

薬剤師。「青空漢方教室」主宰。

カモミールの煎じ液で母がステロイドから脱却できたのをきっかけに、身を守るにはまず、薬のしくみや医学のことを知らなくてはと、福山大学の薬学部に。卒業後、結婚相手の地元・尾道にある松本病院で薬剤師の仕事につく。当初はまったく興味のなかった漢方だが、2004年、仕事ができないほどのめまいや過呼吸、パニック障害などの産後更年期が漢方薬で嘘のように楽に。漢方はタダモノではないと確信する。その5年後、今度はアトピーでただれた息子の皮膚が、おなかを立て直す処方で改善。漢方医学への熱がますますヒートアップする。以来、家事と育児、仕事の合間を縫って、勉強会にかたっぱしから参加し、北は北海道、南は沖縄まで、第一線で活躍する先生たちと親交を深める。「漢方のおもしろさをみんなとシェアできたら」と、絵本や紙芝居を自主制作。勤務先では「漢方のことなら岡崎先生」と、ドクターや患者さんからも信頼が厚い。