足の裏、内側、外側、甲、ふくらはぎには64箇所、内臓や諸器官とつながる反射区があるのですが、それをもんだり押したりして刺激することで血液循環をうながし、老廃物を排泄させ、体の機能を正常に戻していこうというセルフケア術です。
まずは足裏唯一のツボ、湧泉を棒で押していきます。死者蘇生のツボともいわれていて、エネルギーがわきあがってくる万能のツボです。次が基本ゾーン、腎臓から膀胱などの泌尿器系統の反射区をもみます。足先には老廃物がたまりやすいので、これを流すことがとっても大事なんですよ。だから、ふくらはぎの裏側、静脈が走っているラインも重要。血液が足から心臓に戻るのを助けてくれます。指先、かかと、甲など足全体をまんべんなくもみ、ラストはもう一度、基本ゾーン。しっかり老廃物を出してくださいねという意味です。
なお、手もみは「手と脳は直結している」ので、脳細胞が活性化。髪が生えてきた人も!
足にはその人の体調や生活が出る
人の足をもんでいると、「やっぱりね」と頷かされることがよくあります。心臓の反射区が硬いなと思った人から「じつはあのあと、心臓の調子が悪くて入院してました」と聞かされたり、中指の先にタコができている人に「胃が悪い? 目も疲れやすくない?」と聞くと、「そうなんです! 食べると胃が重苦しいし、目も毎日パソコン仕事でしょぼしょぼ」という返事がかえってきたり。足は正直だなと、つくづく思います。
足には内臓や体の諸器官と対応している反射区が64箇所あって、内臓の反射区はすべて足裏にあります。甲は体の前面、のどや胸などですね。そして足の内側は腰、外側は肩やひざです。私が初めてもんでもらったときは、どこを触られてももがき苦しむほど痛かった。それもそのはず。子どもの頃からのアレルギー体質でアトピーもあるし、気管支系も弱い。代謝が悪く、冷え性で肩こり、首こり。おまけに当時はストレスだらけで精神的にもかなりまいっていた時期だったんです。ところが施術が終わってみたら、「あれ? これ、私の体?」というくらい軽くて楽になってて。もう、うれしいビックリでした。
痛くてもあとがスッキリ。病みつきに
足もみのいいところは、愛心棒という専用の棒や指の腹や関節で足をただ刺激するだけ。老廃物を出してくれるのはもとより、全体をもむことで血液循環がよくなり、細胞が元気になります。自律神経やホルモンバランスもととのうので免疫力や自然治癒力が高まり、病気になりにくい体になるんです。
もまれて痛かったり硬いところは、そこの反射区の内臓や諸器官が弱っている証拠。全体をもんだあと、その部分を重点的にもんであげると、痛みの度合いがだんだん減ってきます。何より終わったあと、「膝が痛くて正座ができなかったのが、気がついたらできてる!」「五十肩の腕が上がるようになった」「首がスムーズに動く」など、喜んでくださる方が多い。また、足が軽く細くなるので、「痛いなら片方でやめておきましょうか?」と聞くと、みなさん「いえいえ、もう片方もやってください」となります。血液やリンパの流れがよくなり、むくみがとれて老廃物も流れるんですね。私の場合は、疲れにくくなったというより「疲れを知らない体」に。アトピーの根っこもなくなりました。
自分でぜひ、覚えてください
足は全体重を支えている丈夫な箇所だから、もんだとき、少々痛くても大丈夫。ツボではなくゾーン押しなので、誰がどうやっても間違えることもありません。危険性がないのに即効性があって、何より、自分でやればお金もかからない。本来は、「自分の健康は自分で守る」という体質改善法なんです。
だから、みなさんにもぜひ、足もみを覚えてほしい。虫歯にならないように毎日歯磨きをするように、「病気予防のために、毎日足もみ」をしてほしいんです。
いま、病院に行く人が激増しています。もちろん医学は進歩しているし、いい薬も出てきている。それなのに、病人が減らないというのはどういうこと? 病気になる一歩手前の体を抱えている人が多いからですよね。子どもたちだって、体幹がなくなってるから運動会の組体操が崩れてしまうんです。
「一家に一人、足もみ」がいると心強いです。不調のお手当てや、介護にもいかせるし、お子さんにしてあげたら最高のスキンシップ。親子一対一のコミュニケーションの時間もとれて、絶対おすすめです。足もみ会や養成講座も開いていますので、ぜひどうぞ。
ケアするだけで人の可能性は開かれる
足もみ、ほんとに素晴らしいと思います。でも、足もみでは骨のゆがみは治せないし、食事や生活習慣も見直さないと、本当の意味での健康にはなれないんですよね。
最初は東洋医学のことなんてまったく知らなかった私ですが、足もみに出合ってから、どんどん体のことに興味がわいてきてーー 自律神経をととのえてリラックスさせる深層フェイスセラピー、足で踏んで筋肉をほぐしていく足圧整体、骨のゆがみをととのえる整骨、手の経絡をもむハンドソロジーと、次々と資格を取ってしまいました。いまは、一日の時間の流れと臓器の関連の勉強をしています。根っこの部分でどれもみんなつながっていて、なるほど、と思わされることしきりです。
やっぱり、すべて予防が大事。手もみも、手は脳と直結しているのでアルツハイマーや認知症予防にすごくいいんです。母をいろいろ実験台にしていますが、耳鳴りなどは足もみより手もみのほうが効果がありました。そして整骨。10代のお子さんでも前かがみの人が多いんだけど、それを起こしてあげるだけで気持ちも前向きになれる。人間の体はケアしてあげるだけで可能性がどんどん開けていく。すごいなって改めて感じています。
相坂 典子
Aisaka Noriko
フット&ハンドリフレクソロジー「エンガワの森」主宰。若石式足もみ認定講師。ハンドソロジー認定講師。
知人に誘われ、何気なく体験したのが若石式足もみ。たった一回で、体が驚くほど「軽く」「楽」になり、寝たきりの父にしてあげたいと、2014年、倉敷で開催された養成講座に通う。父への施術には間に合わなかったものの、「走り出したら止まらない午年」気質も手伝って、深層フェイスセラピー、足圧整体、整骨、手もみと、使命感&好奇心にかられて資格を取得。2017年に交通事故で母が要介護2の体になった際には、足もみ、足圧整体、運動療法の3点セットで劇的な回復に導く。自身も足もみが日課で、「生まれつきのアトピー体質や鼻炎が改善したかな」。「一家に一人、足もみを」と、セルフケアの足もみ会も実施。心の痛みや悩みにもさりげなく寄り添い、七福神のような大きな笑顔で包み込んでくれる、みんなのおかあさん。
若石式足もみとは
台湾在住のスイス人神父(台湾名・呉若石)が再構築した足の反射療法。誕生のきっかけは、スイス人の看護師、ヘディ・マザフレが書いた『未来のための健康』という書物。これが神父の手に渡り、持病のリューマチからくる膝関節痛を足をもむことで克服したことから、台湾全土に足もみブームが巻き起こった。それを受けて1982年、「国際若石健康研究会」が発足し、「若石健康法」として確立。現在、50の国と地域に普及し、愛好者は年々増えている。