ワークショップでは、ハタヨガなどのクラシックなヨガをベースに、季節や参加者の顔ぶれに合わせたアーサナ(ヨガのポーズ)や呼吸法で体と心をととのえていきます。2日連続開催の寺子屋ヨガなど時間がたっぷりとれるクラスなら、すべてのヨガの根幹をなすインド哲学や、ヨガを生活の中にどう取り入れていけば役立つのかといった話も交えながら、実践的な動きをいっしょにします。通常はプライベートクラスをおすすめします。相手が何を求めているのか、じっくり観察できたり話を聞けるから。一人ひとりに合ったヨガ—— 、たとえばアーサナなのか哲学なのか瞑想法なのか、カスタマイズして提供できる点が気に入っています。じつはぼくの裏テーマはカウンセング。生きていれば誰しも、いろいろある。でも、自分で自分を観察できるようになれば意識も変わります。その観察のきっかけをたくさんくれるのが、ヨガの魅力です。

平岡充乃介 ヨガ

穏やかで調和した自分になる

「心イコール自分」と思っている人が多いのではないでしょうか。でも、心は心、自分は自分。別ものなんです。
かつてのぼくも、それがわかっていませんでした。いちばん内側のところで動いているものが心であり感情だと思ってた。ところが心の揺れ動きを冷静に一歩引いて見られたとき、「変わらない自分」というポジションを発見したんです。ヨガではそれをアートマン(意識のもっとも深い内側にある個の根源。真我)といいます。そしたら、「だから好き」「だから嫌い」というのがどんどんなくなっていきました。もちろん、自分の中でその人をカテゴライズはするんだけど、感情のブレに支配されてジャッジしなくなったというか。

たとえば、怒りがわいてもまずは深呼吸。そうしたら体も心も落ち着いてきます。心の働きを制御することで目の前のモノやコトに一喜一憂しなくなり、小さなことが気にならなくなります。どんな環境でも、幸せだなと思えることや回数が増えたかも。そういう自分になるための方法として、ヨガのアーサナや呼吸法や瞑想はとても役に立つと思っています。

平岡充乃介 ヨガ

日本の伝統や作法にも通じる精神

ヨガを軸にもっていると、自分がどういうふうに変化してきたのか、比較・分析ができるようになります。そして何かあったときでも、自分の基準はここだった、と取り戻せるのがいい。人生において自由がきくようになります。

いま、ホットヨガやハンモックヨガなど、新しいタイプのヨガがどんどん出てきていますが、ヨガの多様性というか、間口の広いところが好きですね。体があって呼吸があって集中があって瞑想をつくるのがヨガなんですけど、ただ座って瞑想しろといわれても難しい。その点、たとえばハンモックヨガなら、自然に体がゆるんだり呼吸もゆったりしてきます。どんなヨガでも、ヨガはヨガ。ご自分なりのヨガを見つけてもらえたらうれしいです。

ぼくは毎朝、神棚のお水を替えて手を合わせるのが習慣なんですが、これもヨガだと思っています。もちろん、マットを敷いてのヨガもします。でも、何をするかは正座してから決める。体も心も疲れていたら、合掌して呼吸して「今日も一日、お疲れ様でした」で終わることも。正座は体の軸がまっすぐにととのうので、じつはいちばん好きなアーサナです。

平岡 充乃介
Hiraoka Shunosuke

ヨーガ療法学修士。インド中央政府公認ヨーガ教師。プライベートヨガスタジオ「Studio Sahana」主宰。

広島県廿日市生まれ。空手師範の父、ヨーガ療法士の母の背中を見て育つ。学生時代からメンタルヘルスに関心があり、「大学院に進んで臨床心理学の勉強を」と思っていた大学生のときに、ヨーガ療法学会の研究総会に参加。五千年前からあるヨガが実践的な心の科学として発展してきたことに深い感銘を受け、2015年、最先端のヨーガ療法研究で知られる南インドの大学院へ留学を決める。授業は毎週、月曜日から土曜日の朝5時から夕方5時まで。毎日一所懸命に頭を使い、手を使い、ヨガの哲学とヨーガ療法の指導法を2年間学び、療法施設での実習に没頭する。「厳しい生活環境も含めて、とてもいい人生指導をしてもらいました」。現在は横浜にスタジオをもつかたわら、広島方面でワークショップも開催。「ヨガで人生をより豊かに」と願う、まぶしいほどまっすぐな瞳の若きヨギー。