時間帯も場所もスタイルも自然にまかせる、一期一会のヨガが「島ヨガ」です。たとえば、新月なら物事をスタートさせるのにふさわしいヨガ。大潮の日なら、引き潮のときだけ沖合の小島まで道ができる場所でヨガ。雨なら屋根付きデッキのある海辺で、雨粒やしたたる緑を感じながらのヨガ、といった具合。基本的にはリクエストに応じて、その都度、いちばんふさわしい場所や時間帯を選び、プログラミングしています。場所は伯方島をメインに、しまなみ海道沿いの大三島や大島で。「尾道お散歩ヨガ」や「伯方島1dayリトリート」など、しぜん療法院おのみちの家との共催イベントも3ヶ月に一度の割合で行っています。大空や大海原を目の前に、気功に近い感じで体をゆっくり動かしたり深い呼吸をする。インド版賛美歌のキールタンを歌って踊る。デトックスワークショップでは砂に埋もれて大地と一体化、そのあとの眠りのヨーガで至福のリラックス。どの島ヨガもわくわくメニューが満載です。
「子どもの景色」に回帰する
「久恵さんってハートが全開していて、オールOKという感じ」。ヨガ仲間から、こんなふうにいわれることがあります。サンスクリット語でオームというマントラがあるのですが、「おお、承諾。何があっても私は受け入れます、そのままに」という意味に受け取めていて、それを基本に日々を過ごせているのだとしたらありがたいです。
でも、かつての私は違いました。人にどう思われるかだけを気にしていて、毎晩、悪夢を見て冷や汗びっしょり。寝るに寝られず仕事でもミスが続き、苦しいんだけれどそれにフタをしている、という状態。そんなとき、子ども時代によく遊んだ神社へインディアンフルートの真砂秀朗さんの演奏を聴きにいったんです。夕焼け小焼けの空にカラスが飛んでいて、かつて無邪気に歌手ごっこをした舞台から透き通った調べが流れてくる。涙があふれてきて「私、なんか違う方向にいってる?」というのだけがわかりました。そのあとヨガに出逢い、少しずつ自分を取り戻していったのですが、島ヨガで気持ちのいい空間を探し始めたとき、足が向いたのは小さい頃に秘密基地として遊んでいたところばかりでした。素に還れる場所。自然からエネルギーをもらえる場所。子どもって鼻が効くんですよね。
「本来の自分」に出会えるのが、ヨガの魅力
自然の気に満ちた場所にいると、気のめぐりがよくなってきます。自分の中にどんどんエネルギーがあふれてきます。私はおかげさまで、メチャメチャ元気になりました。楽になった。ありのままの自然体の自分でいい。私を嫌いな人がいてもあたりまえ、と思えるようになったんです。
「どうすればゆったりした気持ちになれるのかがわからない」「自然の気の受け取り方がわからない」という方には、島ヨガは最高のツール。波のゆらぎに体や呼吸を合わせてみたり、足裏が砂に沈んで大地とつながるのを感じたり。誘導のお声かけをしていると、いつの間にかみなさん、緊張がとれて、無邪気な笑顔に戻っていきます。いらないもの、よけいなものが一つずつ剥がれ落ちて、純粋な自然とひとつになれるのだと思います。剥がれ落ちたものは潮や大地が吸い取って浄化してくれるから、大丈夫。これがどんどん進んで、もっともっといらないものを手放せたら、どんな「素の自分」が顔を見せてくれるのか、楽しみです。
村上 久恵
Murakami Hisae
「ヨーガ スクエア プルシャ」主宰。日本ヨーガ療法学会認定ヨーガ療法士。Indian Yoga Association認定Level 2 Yoga Teacher。
愛媛県伯方島で生まれ育ち、現在も伯方島に暮らす生粋の島っ子。医療事務の仕事を始めて数年後、心の病、うつになる。それが2003年のこと。「誰からも好かれたいと思うあまり、相手の顔色ばかり見て自分の心にまったく目を向けていませんでした」。心療内科をめぐりながら藁をもつかむ思いでつかんだものの一つが、ヨガ。子どもの頃のお気に入り空間で、DVDで覚えたヨガをしていたところ、何かがどんどんほどけて心が軽くなり、自然体の自分を取り戻す。ご近所さんから、「久恵さんってすごく元気そう。ヨガを教えて」と請われ、それを機にヨーガ療法やヨーガ・ニドゥラ指導など、さまざまな資格を取得。2013年、「ヨーガ スクエア プルシャ」を立ち上げる。大好きな島で外ヨガをする心地よさを独り占めするのはもったいないと、自然の摂理に合わせた自然が決めるプログラム「島ヨガ」を随時、開催。